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殺虫剤を使用しなくても平年並みの収量と品質 (ゆめ農業講座最終回)

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↑小春日和のもと東屋の前で殺虫剤を使わない米作りを振り返る

10月20日(土)、世羅町田打にあるビオトーチで、ゆめ農業講座(第5回)を開催しました。

この日は講座の最終回。

講師と参加者を交え、まとめを行いました。

内容は以下の通りです。

1 ゆめ農業講座2018について
1)目的
ビオトーチの生物多様性を高めるために、米の収量や品質を落とすことなく使用する殺虫剤の使用量を削減することができることの実証。
2)方法
殺虫剤を使用しない圃場と通常のJA全農規格の特別栽培米の圃場(ネオニコ系殺虫剤2成分仕様)を比較して病害虫の発生状況と生き物の発生を調べる。
3)品種・作型・面積等
コシヒカリ 5月中旬田植え 9月中旬収穫 約30a

2 まとめ
1)収量・品質などについて
・殺虫剤を使用しない水田
使用した農薬;①除草剤、②殺菌剤(イモチ病 1成分)
→ 収量;480kg/10a 品質;1等
・そのほかの殺虫剤を使用した特別栽培の水田(比較対象)の平均
使用した農薬;①除草剤、②殺菌剤(イモチ病 1成分)+殺虫剤(2成分)、③殺菌剤(イモチ病と紋枯れ病 2成分)+殺虫剤(1成分)
→ 収量;534kg/10a
・生産者の感想
殺虫剤を使用しなかった水田でも平年並みの収量(480kg)だった。
殺虫剤を使用しなかったことによる収量や品質の差はないように思う。

2)病害虫の発生状況などについて
① ビオトーチの結果
・殺虫剤不使用の水田(3枚、合計30a うち1枚は2年連続殺虫剤不使用)はビオトーチの中でも山林に最も近いにもかかわらず、イネミズゾウムシ、ドロオイムシとも要防除水準以下の発生(ほとんどいなかった)。
・トビイロウンカ、セジロウンカともに要防除基準以下の発生。
・カメムシは要防除水準程度の発生を確認したものの、色彩選別機で一等米調整を行うことができた。
② 広島県の概況
・セジロウンカ,ヒメトビウンカは少発生。トビイロウンカは飛来していない。
・コブノメイガは極少発生。
・斑点米カメムシが「平年よりやや多」の発生。
・イネミズゾウムシ,イネドロオイムシも少なく推移。
3)田んぼの生きものについて
・殺虫剤を使用した水田、不使用の水田とも、タイコウチ、ガムシ、オオコオイムシ、ゲンゴロの仲間、トンボ類を確認できた。
・8月6日に農研機構と実施した生き物調査でも双方の水田でアシナガグモなどのクモ類を多数確認し、農研機構の開発した指標で生き物の豊かな水田であることが示された。
・ただし、田植え後の5月19日の講座では、箱施用殺虫剤を使用した水田でガムシの死骸や動きが鈍くなっている個体が見られた。

4)生物多様性を高めるための病害虫防除体系について
本年度は病害虫の発生が極めて少ない年であり、継続して調査を行う必要があるものの、ビオトーチで栽培されているコシヒカリの作型であれば殺虫剤を使用しなくても収量や品質を落とす確率は極まめて低い。
このことから、田んぼの生物多様性を高めるため防除体系では、殺虫剤の使用は要防除水準を超える場合のみに止め、予防的な使用は控えることが望ましい。
① イネミズゾウムシ、ドロオイムシの防除
・田植え後に要防除水準を超える発生を確認した場合にのみ防除を行う。
・冬に越冬成虫を調査し生息密度を把握する。
・毎年田植え後の発生状況を調査し、年次変化を把握する。
② ウンカ類、ツマグロヨコバイの防除
・トビイロウンカはウンカが増加するよりも前に収穫を行うため防除は不要。
・セジロウンカ要防除水準を超える発生があった場合にのみ、イモチ病の防除と同時に防除。
・ヒメトビウンカ、ツマグロヨコバイはウイルスの保菌率が低いため防除は不要。
③ カメムシ類の防除
・色彩選別機による選別で被害粒は除去することができるので基本的に防除は不要。
・カメムシの被害は畦畔周辺部(畔から5m程度)に集中するが、田打地区では50aを超える大区画の圃場整備が行われており全面積に対する畦畔周辺の面積の占める割合は低い。このため要防除水準を超える発生があったとしても被害粒の割合は少ないことが考えられる。


  1. 2018/10/22(月) 13:58:46|
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