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せら夢公園 自然観察園ブログ

自然観察園、世羅台地の野山と田んぼからの日々のたより

外来生物による農作物被害・生態系破壊にどう対処すべきか!?のご報告

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報告が遅れましたが、去る5月19日(土)、せら夢公園サポーターズクラブ主催で「ゆめ農業講座-外来生物による健康被害・生態系破壊にどう対処すべきか!?-」を三原市久井保健福祉センターで開催しました。

参加者は地元三原市だけでなく、尾道市、世羅町、府中市などから100名を超え、愛媛大学の日鷹一雅さん(農生態学専攻)を講師として、有機稲作にも活用されているスクミリンゴガイ(通称ジャンボタニシ)がもたらす問題点と対処法について学びました。

現在、三原市久井町ではスクミリンゴガイの生息は確認されていませんが、今年4月、久井町内でこの貝を導入して有機稲作を始めるという計画があり困っていると、久井町の方からせら夢公園に相談がありました。

スクミリンゴガイが広く分布している九州や四国では、稲の食害による被害が大きな問題となっていますが、一方で、この貝を雑草対策に活用した有機稲作も各地で行われています。

中には、有機農家の手によって、もともと分布していない地域の田んぼに持ち込まれ、分布域が拡大し慣行農法の農家が被害を被るという問題も起こっており、環境に優しい農業を目指しているはずの有機農家のモラルが問われる事態に発展しているケースもあります。

講演会はこうした背景の中で計画されたわけですが、地元の新聞にも取り上げられるなど、農家をはじめ地元の方々の関心の高さがうかがえる盛況ぶりでした。

日鷹さんからは、講演の冒頭、外来種の問題について次のように説明していただきました。

・外来種:もともとその地域にいなかったのに、人間の活動によって他の地域から入ってきた種。
・侵略的外来種:外来種の中で、地域の自然環境に大きな影響を与え、生物多様性を脅かすおそれのあるもの
・侵略的外来種の問題点
 1 生態系への影響
 2 人の生命・身体への影響
 3 農林水産業への影響

これを踏まえ、話はスクミリンゴガイの問題や対処法に進んでいきました。

1.スクミリンゴガイ(通称ジャンボタニシ)の生態
・国が定める外来生物法で要注意外来生物に選定され、日本の侵略的外来生物ワースト100リスト、世界の侵略的外来種ワースト100リストにあがっているほどの被害をもたらす外来生物。
・生物学的にタニシとは別種の南米原産のリンゴガイの仲間。
・食用目的で1980年頃に日本に持ち込まれたが需要がなく西日本を中心に野生化。県内では福山市神辺町に養殖場があったため市内に広く分布を広げ、稲やクワイで被害が生じている。
・生長、繁殖力は旺盛。
・卵はピンク色の警戒色。外来種なので基本天敵は日本に不在。メスや卵は有毒で、原産地ではヒアリが唯一卵を食べることができる。
・幼生は数ミリと小さく、農業機械、農具、長靴あるいは動物などで移動可能。水面を浮遊し水流に乗るので容易に水田の外へ流出する。大雨では路上をうろつくこともあり、大きくなると下流だけでなく上流域へ遡上する。
・寒さに弱いとされているが、近年北上し、関東一円で発生例が増加している。

2.スクミリンゴガイのもたらす被害
九州、四国などでは、有機農業・減農薬稲作で使えて、楽してもうかるという安易な発想で移植した結果、周辺の農家が大変迷惑し、余計なコストや心労、生物多様性の減少など、様々な問題が生じている。
1)農業被害
・雑草だけでなく稲も食害するので、分布している地域では直播栽培が不可能になっている。
・どんな雑草も食べるわけではなく、クログワイなど難防除雑草は残る傾向がある。
・クワイ、レンコンなどの食害。
2)健康被害
・南方期限の広東住血線虫の好適な中間寄主となり健康リスクも生じる。すでに劇症を起こすこの寄生虫は日本各地で分布が確認されつつあり、温暖化でより発生が懸念されている侵入感染症の一つ。沖縄では小学生の死亡例が報告され、愛知県は健康リスク対策として移動を禁じる条例を制定。スクミリンゴガイを生で食べる習慣のあるタイや中国では死亡を含む広東住血線虫の症例が多数発生している。
3)生態系被害
・希少な水生植物の食害、生息するため池の富栄養化など、生態系リスクが懸念される。

3.対策(駆除)について
・イネの食害回避は殺貝する農薬などの散布(10a当たり3000円)以外にできない。
・肥料として流通している椿粕でも殺貝できるが魚毒性が高いため農薬としての登録はない。
・寒い場所では、導入後、除去できた事例があるが、分布域を広げないことが対策の大原則。
・一般的に外来種で定着できた種群は適応力がある。外来種は環境抵抗に強く、ほとんどの農薬(ネオニコも)、乾燥、耕耘、病気、高温などに非常に強い。
・すでに野外の池に放しているのであれば、駆除だけでなく、周辺調査・モニタリングは開始しなくてはならない。
・農業に活用しているという現実もあり、移動や飼育が禁止される特定外来生物に選定されていないが、愛知県や滋賀県のように条例で移動や飼育を禁止することも重要。

講演終了後の質疑では、客土により期せずしてスクミリンゴガイが発生してしまったという府中市の方からの報告もあり、さっそく駆除剤などを使用した対応が行われることになりました。

講演会では、三原市に外来生物に関する条例制定を求める署名も行われ、多くの方が署名に賛同されているようでした。

その後、三原市や地元農家の申し入れにより、スクミリンゴガイによる有機稲作を準備されていた方は、計画の中止を決定されました。

スクミリンゴガイに限らず、ブラックバス、ウシガエル、アメリカザリガニ、オオキンケイギクなど、私たちの身の回りには多くの外来生物が分布を広げ、本来の生態系・生物多様性が損なわれつつあります。

今回の講演会は、外来生物がもたらす様々な問題について、あらためて考える良い機会となりました。
  1. 2018/06/26(火) 17:52:26|
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